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2009年1月21日 (水)

手くずれ

就任式のあれこれがありましたが私は早々に帰宅しました。管轄の研究室のスタッフが何人かお手伝いにかり出され、なにやらオペレーションサポートをしていたようです。本国にいたら、私も見に行きたかったですね。

帰宅してから、友達から相談を受けました。今は引っ越してしまいましたが、以前は私と同じエリアに住んでいて、ガールスカウト活動をともにしていました。私の力でアマチュア無線に引き込むことに成功した数少ない友達の一人です。今は彼女は某 N○T で NGN がらみのエンジニアさんをしています。

そんな彼女はアマチュア無線は CW 専門。私が CW でオペレートしているのがかっこよかったので、自分もやりたい、と言って、開局前から CW をやるためだけに始めてくれた、嬉しい動機の持ち主です(^^; 今でもたまに私と CW で交信をしています。最近は結婚し引っ越して出力を高められなくなったのをきっかけに QRP に凝っていて、しかもかなりのベテランです。

そんな彼女の相談は、CW についてでした。昨今電鍵を触ってない私が相談を受けるのもどうかと思いますが、なにしろ今はローカルさんやおなじみの OM さんと言える存在があまりいない世の中。相談できる相手も限られています。そうなると、前々からの友達に相談するしかないといったところかもしれません。

私から見て受信は完璧で送信の速度も符号の揃いも良い彼女が、何の相談があるのかしら、と思ったのですが、どうやら 「手くずれ」 のようです。この 「手くずれ」 という用語はガールスカウトでのアマチュア無線の先輩が使っていた言葉であり、広く一般に通用する言葉なのかどうかわかりませんが、言い換えるなら 「CW のスランプ」 です。

CW をスタートするとなると、モールスを暗記して受信練習をし、送信練習をし、実際に QSO するようになってだんだんと速度を上げ、そのうちそれなりに実用的な速度に落ち着くと思います。そうして軌道に乗ってきた時にやってくるのが、この「手くずれ」といわれているものです。だいたい、慣れてくる 2~3年後くらいに陥るパターンが多いようです。とは言っても、別に腱鞘炎のような物理的に何らかの不具合が体に起きているわけではありません。それなのに、なぜか打てない符号が出てくる奇妙な現象です。

かくいう私も一度は軽く経験しています。あまりひどくはなかったのですが、いわゆる 「苦手文字」 ができるのです。この文字はいつも引っかかるのよね、と思い始めると、本当にどんどん引っかかるようになる。そうすると、頭の中で電文を組み立てている時に、いつの間にか 「あ、この文字が途中に 4 回ほど出てくるなぁ…」 なんて頭を巡らせてしまいます。

そして、自動的に電文を組み立てる時にその「苦手文字」をチェックする癖がついてしまうようになります。苦手文字をあまりにも意識しちゃうので、送信中にその文字が来るところで纔かに空白が伸びるなど躊躇したような感じで調子(リズム)がくずれます。一度調子が狂うと、そのあとまで調子が狂いがちなので、苦手ではない文字までおかしくなり、それを誤解して「この文字もダメなの?」 なんて苦手(と思い込む)文字が増えてしまいます。

こうなると厄介で、苦手文字が他にもあるような気がしてきてしまい、「そういえばこの前あの文字を打ったあとのあの文字も引っかかったけど…」 なんて考えはじめてしまい、またもや電文にその文字がないかどうか無意識にチェックするようになり…あとは繰り返しの悪循環です。

何でこんな事が起こるのかはわかりません。そもそも、この話を他の人としたことがありません(^^; CW オペレータ全般にとってはどうなのかはわかりませんが、同様の経験についてちらほら耳にしたことはあります。無線のお友達はそれほど多くないので、耳にする機会があまりないですが。もしかしたら 「そんなの適性がない人だけがかかる」 なんて言われたら、それはショックですが、いずれにしても、精神的な問題だと思います。

これをどう克服するかというと…簡単に言えば、苦手文字があることを忘れることです。意識するから送信で手が詰まるのです。だから、それを忘れてしまえばいい…わけですが、残念ながら人間の記憶には便利な消去機構はついていないので、忘れることなんてできません。むしろ、忘れなきゃ、なんて思うとますます強くリライトされてしまい、症状は悪化するばかりです。

私の場合は…結局は、ちょっと言葉は悪いですが 「良いじゃん、アマチュア無線なんだから、多少調子が悪くても通じるんだし、楽しめれば…」 と逆切れ(^^;することで、途端に送信が詰まらずスムーズに行えるようになりました。スムーズに打てるとはいえ変な癖もついてしまうので、その後は、その調子を落とさないように練習をして元通りの綺麗な符号を打てるように練習し、自分のスキルを正しくオーバーライトしたものです。

ただし、こうしたら治る、という方法はありませんし、精神的な問題を 「こう思いましょう」 と言うのは簡単ですが実行するのは難しいです。そこで、自分の体験を交えつつ、週末やお仕事が早く終わった時に送信練習をサポートすることになりました。彼女はすでに人に習うような立場ではないほど、しっかりとモールスを打てる人だったのでこの期に及んで…という面もあるとは思いますが、こうなった異常は一度苦手文字があるコンディションをリセットするためにも、初心に戻って練習し直すのが、回り道ではあっても一番の近道であり唯一の道だと思います。

さて困ったことに、私が昔練習した時にお借りしたことのある印字機が見あたらないことです。印字機はご存知の通り、打鍵した符号がその通りに印字されるもので、長点を長く打ちすぎていたり、間合いが悪かったりなど、印字した物を見るとビジュアルで本人にもわかります。打鍵してると自分ではなかなか気がつかないですから、あとから見て自分の符号を見て取れるのは便利です。今は手軽に録音ができるので必須ではありませんが、これが好きだったので彼女にも是非使って欲しいと思っただけに、残念です。

治るかどうかはわかりません。厳しいお話、頑張ってみてもダメなら CW がいくら好きでも、諦めた方が本人のストレスにならずに良いかもしれません。符号を苦手と思わないことが大切ですが、それができない人も多いわけで、適切な指導と誘導を受けられず回復できなかった場合には、CW 自体を諦めることになるかもしれません。

今は彼女のそばには私しかいないので、何とか復帰させてあげたいものです。

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コメント

電信をやっていると手崩れを起こさない人はまれだと思います。私の場合ははじめてから1,2年の時になってしまいました。そのあとお休みしていたら直っていました。以下のurlが参考になると思います。頭にhをつけてください。
ttp://ohanashi.okigunnji.com/backnumber/te84.htm
ttp://www17.plala.or.jp/jo7mhc/amatyuaseisinn.CW.index.html
あとは送信方法を変えることですかね。縦、横、バグ、スクイズ、コンピュータなど。私は今コンピュータがほとんどかな。縦振れをつないでおいてゆっくりの時は切り替えています。
お遊びですので気楽に行きましょう。人はパンのみで生きるにあらず・・そうですうどんやご飯やスパゲッティもあるんです(チガ・・)

投稿: ex_jk3*** | 2009年2月 5日 (木) 11時10分

ex_jk3*** さま、こんにちは。

手くずれはやっぱりありますよね。でも、ウェブを見ていてもなかなかそのことに触れられてない気がします。受験のために CW を覚えて、免許を取得して初めて CQ をだし、だんだん慣れていき、ついには 1 アマを…コンテストで…等というエピソードはよく描かれていますが、手くずれについて触れられているページがあまりないので 「自分だけのスランプ(=自分は向いてない?)」 という風に思ってしまう可能性がありますね。

ウェブページの紹介ありがとうございました。どちらも詳しく書かれていてとても興味深いです。特に片方の方は、なんと大戦中の現役の通信兵をされていた方ということで、とても貴重な文章です。失礼ながら、とても驚くのは、それなりにお歳を召された方であると思われるのに、若い人に負けないウェブサイト作りをされているという事です。アマチュア無線家の中にもちらほら見受けられますが、何歳になっても知識を吸収し、それを実践してみることができる方というのは、素敵だと思います。

とりあず、個人的に気になっていた 「手くずれ」 という呼称が一般的な物のようなのも、安心しました(^^;

投稿: JO3KPS/1 | 2009年2月13日 (金) 10時16分

えーちゃんとしたコールでRE:RE:です。
私の電信は独習でした”独習電気通信術”という本で練習しました。(昭和の40年代です)その本にも手崩れのことは出てましたので群馬のOGの方もおそらくどなたからか現象と名称を聞いたのではないかと思います。前にも書いたとおりいまはコンピュータにお任せで・・タイプするときれいな信号が出るので気楽です。インターフェースを以前は自作しないといけなかったのですが今は製品もあります。MFJあたりがポピュラーかな。最近のノーパソはUSBしかないのでUSBIF4CWというのが国内の個人で開発、頒布されているのでこれが便利です。もう20年近くPCにお任せなので送信は20-30分もできないかも・・無理すると腱鞘炎が待ってたりして。でも受信は人間以上の解読機はないですね。

投稿: JG1AYK | 2009年2月17日 (火) 22時50分

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